これまでは、企業の「健康診断」をするうえで大切な指標を7つ紹介してきました。簡単にまとめると”あなたの企業は儲かっていますか?であったり”あなたの企業は潰れませんか?”というのを調べることが大切になってきます。
今回は今まで説明してきた基礎7項目に加えて、さらに精度を上げるための指標を4つ紹介します。この指標をマスターすれば、より安定的に配当金を貰える企業を発掘することができます。
ぜひ覚えてください! 1つずつ紹介していきます。
① 累進配当方針 ~我が社は「これから」投資家の皆さんにいっぱいお金をあげます!~
1つ目に紹介する指標は”累進配当”です。 累進配当とは・・・
減配せず、増配または横ばいを維持する方針
です。
”累”というのは少しずつであったり徐々にという意味があります。なので、少しずつ配当金をあげていきます(もしくは、少なくとも配当金の金額を維持する)よ!という企業からのメッセージです。
いわゆる、企業と投資家とのお約束とも言えます。
累進配当を掲げている企業は増えつつあります。その例の1つが以前もご紹介した”三井住友トラストグループ”です。この会社は三井住友信託銀行を傘下に持つ会社です。他にも総合商社の代表格である三菱商事も累進配当を宣言しています。
これらの企業に投資をするということは、配当金を徐々に増やしていく可能性が高いということになるのでとてもお勧めです。
問題は、累進配当を掲げている企業をどうやって見つけるのか?です。チャットGPTなどで累進配当を掲げている企業を探すのもアリですが、個人的には「日経累進配当株指数」をみるのがおすすめです。これは累進配当を掲げている企業の中から日経新聞が厳選した企業を指数にしたものです。
この指数は、安定したキャッシュフローを持つ企業が多く、景気変動時にも配当収入が比較的安定しやすい特徴があります。高配当投資を重視する投資家にとって、銘柄選定の参考となる指数です。
ただし注意点もあります。
業績悪化時でも維持しようとすると、財務に無理が出る可能性があります。最悪、約束に反して減配する可能性もあります。もちろん、一度、株主とした約束を簡単に破ることはないとは思いますが、累進配当を掲げている企業でも”しっかりと稼げている企業なのか?”という確認はしっかりとしたほうがよさそうです。
② 連続増配 ~我が社は「今まで」投資家の皆さんにいっぱいお金をあげてきましたよ!~
連続増配は・・・
毎年配当を増やし続けている企業
を指します。
先ほどの累進配当はこれから配当金をあげていきますよという”未来”を指してきたのに対して、連続増配は「過去の実績」に重きを置きます。 つまり、”我が社は今まで配当金の金額をあげてきましたよ!”ということです。
長期にわたって配当を増やし続ける「連続増配企業」は、投資家にとって非常に魅力的な存在です。なぜなら、連続増配ができる企業には明確な共通点があるからです。それが「収益力の安定」と「株主還元姿勢の強さ」です。
まず、増配を継続するためには、企業が安定して利益を生み出し続ける必要があります。景気の波を受けにくいビジネスモデルや、強固なブランド力を持つ企業は、多少の不況でも利益を確保できるため、配当を維持・増加させる余力があります。つまり連続増配の実績は、その企業の稼ぐ力そのものを証明していると言えます。
次に、株主還元への姿勢です。利益が出ていても、必ずしも増配するとは限りません。企業によっては内部留保を優先する場合もあります。その中で増配を続ける企業は、「株主に継続的に報いる」という明確な方針を持っているのです。この姿勢は経営の一貫性や信頼性にもつながります。
日本企業の中で代表的な連続増配銘柄として知られるのが花王です。花王は数十年にわたり増配を続けており、安定した収益基盤と強いブランド力、そして株主重視の経営を体現しています。まさに「実績が信頼を生む」企業の典型例です。
一方で、連続増配という観点ではアメリカ株の方がさらに進んでいます。米国には「配当貴族」と呼ばれる、25年以上連続で増配している企業群が存在し、その数は日本よりも圧倒的に多いです。たとえばProcter & GambleやCoca-Colaなど、世界的企業が長期にわたる増配を実現しています。
このように、連続増配企業は単なる高配当銘柄ではなく、「稼ぐ力」と「株主への誠実さ」を兼ね備えた優良企業です。実績は最強の説得力を持ちます。だからこそ、長期投資においては連続増配という視点が非常に重要になるのです。
③ ROE(自己資本利益率)~私たちは自分たちのお金でこれだけ稼いでいるんです!~
ROEは・・・
株主資本をどれだけ効率よく使っているか
を測る指標として近年、めちゃめちゃ注目されています。
ROE(自己資本利益率)は、企業の「稼ぐ力」と「経営の上手さ」を測る非常に重要な指標です。ROEとは、株主から預かったお金(自己資本)を使って、どれだけ効率よく利益を生み出しているかを示すものです。計算式は「当期純利益 ÷ 自己資本」で表され、この数値が高いほど、少ない元手で大きな利益を出している優秀な企業と考えられます。
一般的に、ROEの目安は10%以上とされています。つまり、株主が出資したお金に対して、年間で10%以上のリターンを生み出している状態です。たとえば100万円の自己資本で10万円の利益を出していれば、ROEは10%になります。
では、日本企業の平均はどのくらいなのでしょうか。日本株のROEはおおよそ8〜10%程度とされており、まだ改善の余地があると言われています。一方、アメリカ企業はROEが15%前後と高い水準にある企業が多く、資本効率の面で日本より優れているケースが目立ちます。この差は、株主還元への意識や経営の意思決定スピードの違いなどが背景にあります。
ROEが高い企業は、「資本効率が良い」「無駄な資金を抱えていない」「利益をしっかり出せるビジネスモデルを持っている」といった特徴があります。つまり、経営が上手い可能性が高いのです。ただし、一時的に利益が伸びているだけでROEが高く見える場合もあるため、継続的に高い水準を維持しているかを確認することが大切です。
また、ROEはEPS(1株当たり利益)の成長とも密接に関係しています。企業が効率よく利益を生み出せれば、その分EPSも成長しやすくなります。EPSが伸びれば、株価の上昇や増配にもつながるため、長期投資において非常に重要なポイントです。
近年、ROEが注目されている背景には、投資家の意識変化があります。かつての日本企業は内部留保を重視する傾向がありましたが、現在は「株主の資金をどう活用するか」がより厳しく見られるようになりました。こうした流れの中で、ROEは企業の価値を測るシンプルで分かりやすい指標として、多くの投資家に重視されるようになっています。
初心者の方は、まず「ROE10%以上」を一つの基準にしながら、その企業が継続的に高いROEを維持できているかをチェックしてみてください。それだけでも、質の高い企業を見極める大きなヒントになります。
④ DOE(株主資本配当率)
DOEは・・・
株主資本に対してどれだけ配当しているか
を指す指標です。
DOE(株主資本配当率)は、「安定して配当をもらえるか」を判断するうえで非常に役立つ指標です。改めて整理すると、DOEは「配当総額 ÷ 株主資本」で計算され、企業が持つ純資産に対してどれくらい株主へ還元しているかを示します。
ここで重要なのが、日本企業の平均的なDOE水準です。結論から言うと、日本企業のDOEはおおよそ2〜3%程度が一つの目安とされています。もちろん企業や業種によって差はありますが、多くの上場企業はこのレンジに収まることが多いです。
この水準をどう見るかですが、例えばDOEが3%の企業であれば、「株主資本に対して毎年3%分の配当を出す」というイメージになります。これは短期的な利益に左右されにくいため、配当の安定性が高いと評価されやすいポイントです。逆に、DOEが1%未満の企業は還元姿勢が弱い可能性があり、5%以上であればかなり積極的に株主還元を行っている企業と考えられます。
ここで、配当性向との違いを改めて整理しておきましょう。配当性向は「純利益」を基準にするため、業績が悪化すれば配当も減りやすく、逆に好調な年は増配されやすいという特徴があります。つまり、配当金が上下しやすい指標です。一方、DOEは「株主資本」という比較的安定した数値を基準にするため、企業側も長期的な視点で配当を設計しやすく、結果として投資家も安定的に配当を受け取りやすくなります。
実際にDOEを重視している企業の代表例が花王です。花王は累進配当(減配しない方針)と組み合わせることで、長期的に安定した増配を実現してきました。このようにDOEを意識する企業は、「短期の利益よりも長期的な信頼」を重視しているケースが多いです。
また、三菱UFJフィナンシャル・グループのような大企業でも、株主還元方針の中でDOEを意識する動きが見られます。これは、日本全体で「資本効率」や「株主重視」の流れが強まっている証拠です。
まとめると、日本の平均DOEは2〜3%程度であり、これを基準に企業の還元姿勢を比較することができます。配当性向だけでなくDOEもあわせてチェックすることで、「ブレやすい配当」なのか「安定して受け取れる配当」なのかを見極める力が身につきます。長期投資を考えるなら、この視点は非常に大きな武器になります。

