この記事の要点(30秒チェック)
- 最低賃金は毎年秋(多くは10月)に都道府県ごとに改定される。パートの時給が最低賃金ぎりぎりなら、10月の給与明細で時給が上がっているか確認する
- 時給が上がると同じ時間働いても年収が増える。「壁」の範囲内で働いている人は、年末にかけて超えないか計算し直す必要がある
- 壁は大きく「税金の壁」と「社会保険の壁」の2種類。税金の壁は2025年分から引き上げられ、社会保険の壁(106万円・130万円)のほうが家計への影響が大きい
- 壁を超えないように時間を減らすより、「超えて手取りを増やす」が得になるラインもある。10月に一度、年収見込みを出して考える
毎年秋になると、都道府県ごとの最低賃金が改定されます。多くの地域で10月に新しい金額が発効するため、時給で働いているパートの方は、10月の給与明細で時給が上がっているか確認するタイミングです。ただ、時給が上がると同じ時間働いても年収が増えるので、「扶養の範囲内で働く」と決めている方は、年末にかけて壁を超えないか計算し直す必要が出てきます。この記事では、最低賃金の改定で確認すべきこと、2種類の壁の違い、そして「壁を守る」か「超えて稼ぐ」かの考え方を整理します。金額は年によって変わるので、最新の数字は厚生労働省や自治体の案内で確認してください。

時給が上がるのはうれしいけど、「壁」との距離も変わるんだよね。10月に一度、年収の見込みを出し直しておこう!
最低賃金の改定|10月に確認する3つのこと
最低賃金は、夏に国の審議会が引き上げの目安を示し、都道府県ごとに金額が決まって、秋に発効します。発効日は都道府県によって違い、10月上旬〜中旬が多いものの、年によってはもう少し後ろにずれる地域もあります。確認すべきは次の3つです。
①自分の地域の新しい最低賃金と発効日。厚生労働省のサイトや都道府県の労働局の案内で確認できます。②10月の給与明細の時給欄。発効日以降の勤務分は新しい時給が適用されるはずです。上がっていなければ、勤務先に確認を。最低賃金を下回る時給は法律で認められていません。③年収の見込み。新しい時給×月の勤務時間×残りの月数で、年末までの年収を計算し直します。
「壁」は2種類|税金の壁と社会保険の壁
| 壁の種類 | 目安の年収 | 超えるとどうなる |
|---|---|---|
| 所得税の壁 | 160万円(2025年分から引き上げ) | 超えた分に所得税がかかる。手取りが減ることはない |
| 配偶者(特別)控除の壁 | 配偶者の控除が満額なのは本人年収160万円まで。以降は段階的に減る | 配偶者側の税金が少しずつ増える |
| 社会保険の壁(106万円) | 従業員51人以上の勤務先などで、週20時間以上・月8.8万円以上などの条件を満たすと加入 | 保険料の自己負担が発生。手取りが一時的に減る |
| 社会保険の壁(130万円) | 勤務先の規模にかかわらず、配偶者の扶養から外れる | 自分で国民年金・国民健康保険などに加入 |
ポイントは、税金の壁は超えても損にならないということです。所得税は超えた分にだけかかるので、年収が増えれば手取りも増えます。2025年分の税制改正で所得税がかからない年収の目安は160万円まで引き上げられ、以前の「103万円」を気にする必要はなくなりました。住民税がかかり始めるラインは自治体によって異なり、おおむね100万円前後なので、自治体の案内で確認してください。
一方、社会保険の壁は超え方によって手取りが減ることがあります。106万円または130万円を少し超えただけだと、保険料の負担で手取りが年収の増加分を上回ってしまう「働き損」の範囲が生まれます。ここが、壁を意識するいちばんの理由です。なお、社会保険の加入条件は法改正で段階的に広がる予定があるため、勤務先の規模要件などは最新の情報を確認してください。
最低賃金が上がると壁との距離はどう変わる?
たとえば、時給1,050円で月90時間働いている人の年収は約113万円。時給が1,100円に上がると、同じ90時間で約119万円になります。130万円の壁までは余裕がありますが、「年末に繁忙期でシフトが増える」と超える可能性が出てきます。逆に、106万円の壁を意識していた人は、時給が上がっただけで超えてしまうこともあります。
だから、10月に新しい時給で年収の見込みを出し直すことが大事です。計算式は「新しい時給×月の平均勤務時間×12」。ボーナスや交通費の扱いは勤務先や壁の種類で変わるので、迷ったら勤務先の担当者に聞いてみましょう。

私は「103万円」をずっと気にしてたけど、税金の壁はもう160万円になってたんだね。気にするのは社会保険の壁のほうだった。
「壁を守る」か「超えて稼ぐ」か|考え方の整理
社会保険の壁を超えないように勤務時間を減らすのは、短期的には手取りを守る選択です。ただ、長い目で見ると、社会保険に加入すると将来の年金(厚生年金)が増える、病気やけがで休んだときの傷病手当金がある、といったメリットもあります。
目安として、社会保険に加入した場合、年収が壁を大きく超えると(一般に130万円の壁なら150万〜160万円程度以上といわれます)、保険料を引いても手取りが壁の手前より増えます。「あと少しで超える」なら時間を減らして壁を守る、「しっかり超えられる」なら超えて稼ぐ、という二択で考えるのが現実的です。中途半端に少しだけ超えるのが、いちばん手取りが減ります。
どちらを選ぶかは、家計の状況・子どもの年齢・将来の働き方で変わります。勤務先に「社会保険に入った場合の手取り試算」を頼める場合もあるので、10月のうちに相談してみてください。
ぐで子の場合(106万円をわずかに超えそうになり、シフトを調整した)
ぐで子は従業員の多い店でパートをしていて、時給が上がった結果、年末まで同じシフトだと106万円を少し超える計算になりました。「少しだけ超える」のが一番損だと知っていたので、11〜12月のシフトを月4時間だけ減らして壁の内側に。「来年はもっと働いて、しっかり超える側に行くかどうかを夫と相談する」と話しています。10月に計算し直したから調整できた例です。
とく美の場合(「103万円」の思い込みを手放して、手取りが増えた)
とく美は長年「103万円を超えたらダメ」と思い込み、秋になると勤務を減らしていました。今年、税金の壁が160万円になっていること、社会保険の壁は勤務先の規模で違うことを知り、勤務先に確認したところ、自分の職場は106万円の壁の対象外(従業員50人以下)と判明。130万円まで働けると分かり、秋のシフトを減らさずに済みました。「知らないだけで、毎年2〜3万円分の働く機会を手放してた」とのこと。まず自分の勤務先がどの壁の対象かを確認するのが第一歩です。
よくある質問
Q. 最低賃金はいつから適用されますか?
A. 都道府県ごとに発効日が決まっていて、10月上旬〜中旬が多いですが、年や地域によって異なります。厚生労働省や各都道府県労働局のサイトで確認してください。
Q. 10月の給与明細で時給が上がっていませんでした。
A. 発効日より前の勤務分は旧時給のことがあります。発効日以降の勤務分も上がっていなければ、勤務先に確認を。最低賃金を下回る時給は認められていません。
Q. 「103万円の壁」はもうないのですか?
A. 2025年分の税制改正で、所得税がかからない年収の目安は160万円まで引き上げられました。ただし住民税は自治体によって異なり、おおむね100万円前後からかかります。
Q. 106万円の壁の対象かどうかは、どう調べますか?
A. 勤務先の従業員数(51人以上かどうか)、週の勤務時間(20時間以上か)、月の賃金(8.8万円以上か)などが条件です。勤務先の担当者に聞くのが確実です。条件は法改正で変わる予定があるので、最新情報も確認してください。
Q. 交通費やボーナスは年収に含まれますか?
A. 壁の種類によって扱いが違います。社会保険の130万円の壁では通勤手当を含めて判定されるのが一般的ですが、106万円の判定では含めません。税金の計算では非課税の通勤手当は含みません。迷ったら勤務先や年金事務所に確認を。
Q. 壁を超えて働くと、将来どんなメリットがありますか?
A. 厚生年金に加入すると将来の年金が増えます。また、傷病手当金や出産手当金など、扶養内では受けられない保障もあります。目先の手取りだけでなく、この点も含めて判断してください。
Q. 年の途中で壁を超えそうだと気づいたら?
A. 残りの月の勤務時間を調整するか、超える前提で働き方を変えるかを決めます。10月に気づけば調整の余地がありますが、12月では難しいので、早めの計算が大事です。
Q. 夫の会社の「配偶者手当」はどうなりますか?
A. 会社によって、配偶者の年収に上限を設けていることがあります。税金や社会保険とは別の基準なので、配偶者の勤務先の規定を確認してください。
まとめ|今日からできる1アクション
最低賃金は秋に改定され、時給が上がると同じ時間でも年収が増えます。壁は税金の壁(超えても損はない・2025年分から160万円に)と社会保険の壁(106万円・130万円、少しだけ超えると手取りが減る)の2種類。大事なのは10月に新しい時給で年収の見込みを出し直し、「守る」か「しっかり超える」かを決めることです。中途半端に超えるのが一番損になります。
今日の1アクションは、「新しい時給×月の勤務時間×12」で年収の見込みを計算すること。2分で終わります。そのうえで、自分の勤務先がどの壁の対象かを担当者に一言聞いてみてください。
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